加齢による心の変化は誰にでも起こります。身体的な衰えから以前できたことができなくなり、焦燥感に駆られる、退職による人間関係の変化、配偶者や近親者との死別による過度のストレスから精神疾患にかかるといった問題が顕在化します。
また、概して保守的になり、頑固になります。他人に厳しくなり、かんしゃくを起こしやすいのも特徴と言えるでしょう。ただし、こうした変化は個人差が大きく、「高齢者はこうだ」と決めつけるのは危険です。
介護に携わる場合、こうした高齢者の心理的な傾向を知った上で、日々の業務に当たる必要があります。
例えば、衣服の着脱がスムーズにできない、食事に時間がかかるといった事象を見て、執拗に急かしたり、厳しい口調で叱責するのは慎むべきでしょう。ともすると、業務に追われるあまり、決まった時間内に着替える、完食してもらうことに注意が向けられがちですが、高齢者の身体的特性や心理状態を考えた場合、不適切な言動と言わざるを得ません。
介護を行う際には高齢者も一人の人間であり、人生の先輩であるという意識が重要です。過度にかしこまる必要はありませんが、「○○さん」とさん付けで呼びかけ、相手の話に耳を傾ける謙虚さが求められます。
また、高齢者はちょっとした気温の変化や疲労の蓄積で大きく体調が変化します。つい数時間前まで快活だった人が急にふさぎ込むことさえあります。「これだから高齢者は困る」と断じるのではなく、相手の事情を考えて対応することが大切です。